追証が払えないときどうする?正しい対処法と借金になった場合の解決策
株式の信用取引で「追証(追加保証金)」が発生し、期限までに用意できないと気づいた瞬間は、頭が真っ白になってしまうものです。
放置すれば状況は悪化しますが、正しい手順を踏めば冷静に解決へ進められます。この記事では、まず取るべき行動から放置した場合に起こること、証券会社への相談や弁護士への債務整理相談といった対処法までを解説します。一人で抱え込まず、今できることから確認していきましょう。
追証が払えないと気付いた瞬間に取るべき3つの緊急対応
追証の支払いが難しいとわかったときほど、慌てず冷静な行動が求められます。
放置する時間が長引くほど選択肢は狭まっていくため、まずは状況の確認と早めの連絡を優先しましょう。ここでは、気付いた瞬間に取るべき3つの緊急対応を解説します。
追証発生通知での確定金額・入金期限の確認
追証が発生したら、まず証券会社の取引ツールやメールで通知内容を確認しましょう。確認すべきは「解消に必要な確定金額」と「入金期限」の2点です。
入金期限は一般的に追証発生日の翌々営業日(正午または24時まで)とされていますが、証券会社によって異なります。通知に記載された日時を必ずご確認ください。
追証は相場が回復しても自動的には解消されないため、思い込みで放置せず、正確な数字を自分の目で確かめることが第一歩になります。
証券会社への連絡と分割払い・猶予の相談
資金の用意が間に合わないとわかった時点で、証券会社のカスタマーセンターへ早めに連絡しましょう。
支払う意思があることを伝えたうえで、猶予や分割払いの相談ができないか誠実に尋ねることが重要です。必ず希望どおりになるとは限りませんが、連絡を絶やさない姿勢が今後の対応を左右します。
建玉の決済・保有資産の売却による追証額の圧縮(証券会社により扱いが異なる)
現金の用意が難しい場合は、保有している建玉の一部を決済することで追証額を圧縮できる場合があります。
ただし、建玉の決済が追証の解消に充当されるかどうかは証券会社によって異なります。さらに同じ証券会社でも、追証の発生要因(委託保証金率の低下によるものか、最低保証金額を下回ったことによるものか)によって扱いが変わり、最低保証金割れによる追証は入金でしか解消できないケースもあります。
一方、口座内の株式や投資信託を売却して代金を保証金に充当する方法や、保有株式を代用有価証券として差し入れる方法は、多くの証券会社で有効です。
いずれの方法が使えるかは自社のルール次第のため、まずはカスタマーセンターに確認してください。
追証を払えない場合に起こる5つの段階
追証をそのままにしていると、証券会社のルールに沿って手続きが段階的に進んでいきます。
何が起きるかをあらかじめ知っておくことで、次に取るべき行動を落ち着いて判断できます。ここでは、未払いのまま放置した場合に起こる5つの段階を紹介します。
入金期限到達による強制決済
入金期限までに追証が解消されないと、保有している建玉は証券会社によって強制的に決済されます。
これは「反対売買」と呼ばれ、相場の回復を待つ余地はありません。本人の意思にかかわらず市場価格で処理されるため、想定より不利な価格で損失が確定することもあります。
強制決済後に残る不足金(借金化)
強制決済をしても、相場の急変によって売却代金だけでは損失を補いきれないことがあります。
このとき残るマイナスの差額は「不足金」として確定し、証券会社に対する返済義務のある借金に変わります。投資の失敗だからと帳消しになるわけではなく、早急な返済を求められる段階に移ります。
遅延損害金の発生
確定した不足金を期限までに支払えないと、その翌日から遅延損害金が発生します。
利率は証券会社の約款によりますが、年14.6%程度に設定されているケースが一般的です。たとえば不足金100万円を1年間放置すると、遅延損害金だけで約14.6万円が上乗せされる計算になります。正確な利率は取引説明書や約諾書でご確認ください。
支払いが遅れるほど負担は大きくなるため、この段階に至る前に早めに対策を講じることが何より重要です。
裁判所からの支払督促・訴状
証券会社からの督促を無視し続けると、手続きは裁判所を通じた法的措置へ移行します。具体的には、簡易裁判所からの「支払督促」や、訴訟を起こされた場合の「訴状」が自宅に届きます。
支払督促が届いた場合、送達を受けた日から2週間以内に督促異議を申し立てないと仮執行宣言が付され、そこからさらに2週間で確定します。確定すると強制執行が可能になるため、書類が届いたら日付を確認し、すぐに弁護士や法テラスへ相談してください。異議を申し立てれば通常の訴訟に移行し、こちらの主張を述べる機会が得られます。
給与差し押さえなど職場・家族に知られるリスク
支払督促や判決が確定すると、強制執行として銀行口座の凍結や給与の差し押さえが行われます。
給与の差押えは、民事執行法により原則として手取り額の4分の1までと定められています(手取りが44万円を超える場合は、33万円を超える部分が対象)。全額が差し押さえられるわけではありません。
ただし、差押えは完済まで継続します。また、裁判所から勤務先へ直接通知が送られるため、借金トラブルを抱えている事実が職場に知られる可能性が非常に高くなります。
追証の踏み倒し・放置がもたらす3つのリスク
追証から目をそらして連絡を断ってしまっても、問題が自然になくなることはありません。
むしろ状況は悪化し、生活全体に影響が及ぶ可能性が高まります。ここでは、放置し続けることで生じる3つのリスクを解説します。
遅延損害金による負債の増加
支払いを放置する最大のデメリットは、遅延損害金が加算され続けることで負債が膨らんでいく点です。
支払いが遅れた期間に応じて負担は増え続けるため、時間が経つほど自力での解決が難しくなります。早めに状況を整理し、対策を考えることが大切です。
証券会社での取引停止と、信用情報への影響
不足金を未払いのまま放置すると、まずその証券会社での信用取引や新規取引が停止され、不足金が解消されるまで口座の利用に制限がかかります。
なお、「61日以上の延滞で信用情報機関に登録される」という基準は、クレジットカードやローンなど、信用情報機関の加盟会員が扱う債権についてのものです。証券会社は一般に信用情報機関の加盟会員ではないため、不足金の未払いがそのまま個人信用情報に登録されるとは限りません。
ただし、債権が回収会社に譲渡された場合や、法的手続きを経て差し押さえに至った場合は、クレジットカードやローンの審査に影響することがあります。取扱いは証券会社によって異なるため、ご自身が契約している証券会社の約款や取引説明書をご確認ください。
なお、未払いを時効待ちで解決しようとするのは現実的ではありません。放置せず、誠実に対応することが何より大切です。
財産・給与の差し押さえという法的リスク
未払いを放置し続けた末に待っているのは、裁判所を通じた財産の差し押さえです。
預貯金や給与が回収の対象になります。給与については手取り額の4分の1までという上限がありますが、預貯金は口座残高が原則として全額差押えの対象です。差し押さえは完済するまで続くため、早い段階での対応が欠かせません。
追証が払えないときの現実的な対処法
自力での一括返済が難しいとわかったら、一人で抱え込まず、現実的な解決策を選ぶことが重要です。
専門機関や適切な手続きをうまく活用すれば、状況を立て直す道は残されています。ここでは、取り得る主な対処法を3つ紹介します。
証券会社への分割払い相談
まずは取引先の証券会社へ連絡し、現在の状況を正直に伝えたうえで分割払いを相談しましょう。
原則は一括返済が求められますが、誠実に対話を重ねることで、無理のない範囲の分割計画に応じてもらえる場合があります。自分から相談する姿勢を見せることが、解決への第一歩になります。
弁護士・司法書士への債務整理相談(任意整理・個人再生・自己破産)
証券会社との交渉が難しい場合や、返済の見通しが立たない場合は、債務整理の専門家である弁護士や司法書士に相談しましょう。
専門家に依頼すると、以下のような法的手続きを通じて負担を軽減できる可能性があります。
| 手続きの種類 | 概要 |
|---|---|
| 任意整理 | 専門家が代理人となり、今後の返済方法や期間について交渉する手続き |
| 個人再生 | 裁判所を通じて負債を大幅に減額し、計画的に返済していく手続き |
| 自己破産 | 裁判所への申立てにより、一定の財産と引き換えに返済義務の免除を目指す手続き |
なお、投資による負債は破産法上の免責不許可事由に該当する場合がありますが、反省の態度や生活状況を踏まえ、裁判所の裁量で免責が認められる「裁量免責」が下りるケースも少なくありません。
また、免責不許可事由が問題になるのは自己破産の場合です。個人再生には免責不許可事由の制度がないため、投資による負債であっても借入の理由を問わず利用できます。自己破産の裁量免責に不安がある場合は、個人再生も含めて専門家に相談してください。
法テラスの民事法律扶助を利用して費用の負担を抑える
弁護士や司法書士への相談費用が心配な場合は、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用できます。
収入・資産が一定額以下などの要件を満たせば、同一問題について3回まで無料で法律相談を受けられます。さらに、弁護士・司法書士に依頼する際の費用を法テラスが立て替え、利用者は原則として月5,000円〜1万円程度の分割で返済していく仕組みです。
追証の不足金は金額が大きくなりやすく、着手金の用意が難しいケースも少なくありません。「費用が払えないから相談できない」と諦める前に、まず法テラスへ問い合わせてください。
法テラス・サポートダイヤル:0570-078374(平日9:00〜21:00、土曜9:00〜17:00)
知恵袋・SNSで語られる追証の噂の検証
インターネット上には追証に関するさまざまな情報がありますが、中には誤った噂や極端な体験談も混ざっています。
間違った情報を鵜呑みにすると判断を誤る原因になるため、ここではよくある噂の実態を検証します。
「追証は自己破産できない」という噂の実態
「投資で作った借金は自己破産できない」という噂を見かけることがありますが、これは正確ではありません。
株やFXの取引は破産法上の免責不許可事由に該当する場合がありますが、免責が認められないと決まっているわけではありません。反省の態度を示すことで、裁量免責という形で支払いが免除されるケースも多く存在します。
さらに、そもそも個人再生には免責不許可事由の制度がありません。自己破産で免責が認められるか不安な場合でも、個人再生であれば借入の理由を問わず利用できます。一人で判断せず、専門家に相談してみましょう。
証券会社ごとの対応の違い(一般論として)
追証の解消期限や強制決済のタイミングは、証券会社によって多少の違いがあります。
ただし、未払いを放置すれば最終的に法的措置に進むという基本的な流れはどの証券会社でも変わりません。特定の会社の対応が甘いと期待するのではなく、早期に誠実な対応を取ることを心がけましょう。
SNS(X・なんJ)の体験談を鵜呑みにしない注意点
SNSや掲示板では、「連絡を無視していたら回収をあきらめてもらえた」といった体験談が見られることがあります。
こうした情報は一時的な状況や事実と異なる内容であることも多く、鵜呑みにするのは避けたほうが賢明です。
また、SNSなどで「借金を一本化します」「債務整理の費用を立て替えます」と持ちかけてくる業者にもご注意ください。正規の登録を受けていない貸金業者(いわゆる闇金)や、弁護士資格を持たずに債務整理を仲介する「整理屋」は、状況をさらに悪化させます。貸金業者は財務局または都道府県への登録が必要です。不安な場合は、日本貸金業協会の貸金業相談・紛争解決センター(0570-051-051)や、金融庁の金融サービス利用者相談室に確認してください。
公的な情報や専門家のアドバイスを基準に、冷静に対処していきましょう。
まとめ
追証が払えないと気づいたときは、放置せずできるだけ早く行動することが何より大切です。まずは確定金額と入金期限を確認し、証券会社へ誠実に相談しましょう。
自力での解決が難しいと感じたら、早めに弁護士や司法書士へ相談しましょう。任意整理・個人再生・自己破産といった手続きで、負担を大きく軽減できる可能性があります。
相談費用が心配な場合は、法テラスの民事法律扶助を利用すれば、無料の法律相談や弁護士費用の立替えを受けられます。追証を埋めるために新たな借入を重ねることは、状況を悪化させるだけです。まずは専門家に現状を伝えることから始めてください。
参考:日本貸金業協会「悪質な金融業者にご注意!」 https://www.j-fsa.or.jp/topics/association/dark_finance.php
参考:金融庁「金融サービス利用者相談室」 https://www.fsa.go.jp/receipt/soudansitu/index.html
参考:法テラス(日本司法支援センター)「借金に関するよくある相談」 https://www.houterasu.or.jp/site/faq/syakkin.html
参考:裁判所「支払督促」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_22/index.html
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