追証が払えず破産・債務整理になる前に!知っておくべき対処法5選を紹介
追証(追加保証金)の支払いに追われ、「もう自己破産しかないのだろうか」と一人で悩んでいないでしょうか。証券会社からの督促に、精神的に限界を迎えている方も少なくありません。
しかし、投資による借金であっても、法的な手続きで解決へ向かわせることができます。この記事では、追証による借金が自己破産などの債務整理でどう扱われるか、放置した場合のリスク、専門家への相談手順を解説します。
追証の借金と自己破産の可否|免責不許可事由と裁量免責の仕組み
株式投資やFX取引で発生した追証は、金額の大きさから生活を圧迫する原因になります。
ここでは、投資の借金が自己破産でどう扱われ、なぜ解決の道が残されているのかを解説します。
株・FXの追証が「免責不許可事由(破産法252条1項4号)」に該当しうる理由
破産法252条1項4号は「浪費又は賭博その他の射幸行為をして著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」を免責不許可事由として定めています。
射幸行為とは、偶然の利益を狙うギャンブル性の高い行為を指します。信用取引やFXは、レバレッジをかけて短期の値動きで利益を狙う点から、この射幸行為にあたると判断される場合があります。
ただし、投資であれば一律に該当するわけではありません。裁判所は、取引の頻度や規模、収入との釣り合い、投資を始めた経緯などを個別に見て判断します。そして、免責不許可事由に該当した場合でも、自己破産ができなくなるわけではありません。
裁判所が個別に免責を認める「裁量免責」という救済措置
免責不許可事由がある場合でも、裁判所の判断で借金の免除を認めてもらえる「裁量免責」という制度があるためです。
裁判所は、破産に至った経緯や反省の態度、生活再建への意欲などを総合的に考慮して判断します。
日本弁護士連合会の「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査【報告編】」によると、免責許可となった割合は96.85%、免責不許可は0.00%でした。免責を得られなかったのは申立却下・棄却0.16%と取下げ1.37%を合わせた1.53%にとどまります。
これは自己破産全体の数字であり、免責不許可事由がある事件だけを抜き出した割合ではありません。ただし、免責不許可が0.00%という結果は、免責不許可事由があっても裁量免責という形で認められるケースが多いことを示しています。
裁量免責を得るために避けるべき注意点
手続き中に不誠実な行動を取ると、裁判所からの心証が悪くなり、裁量免責が認められにくくなるためです。
自己破産を決めた後に再びFXや株取引を行う行為や、財産を隠したり嘘の説明をしたりする行為は厳禁です。誠実に反省を示し、調査に協力する姿勢が、免責を得るための重要な条件になります。
管財事件になりやすい理由と同時廃止との違い
追証のような免責不許可事由がある借金では、財産や免責の適否を詳しく調査する必要があるためです。
自己破産には「同時廃止」と「管財事件」の2種類があり、投資による借金は免責の適否を調べる必要があるため、管財事件として扱われるのが一般的です。
管財事件のうち、弁護士に依頼している場合は「少額管財」という簡易な運用を利用できる裁判所が多く、予納金は20万円程度、期間は3〜6ヶ月程度が目安です。一方、通常管財になると予納金は50万円以上、期間も1年前後かかることがあります。
なお、少額管財は弁護士が代理人になっていることを条件とする裁判所がほとんどです。司法書士は書類作成のみの支援となり少額管財を利用できない場合があるため、管財事件が見込まれるケースでは弁護士への依頼を検討してください。
追証を放置・踏み倒しした場合の4つの法的リスク
追証を支払わないまま放置したり踏み倒そうとしたりすることには、深刻な法的リスクが伴います。
ここでは、証券会社が取る法的な手続きと、時効にまつわる誤解について整理します。
裁判所から届く「支払督促」と一括請求
証券会社への支払いを無視し続けると、法的措置の初期段階として裁判所から「支払督促」が自宅に届くためです。
これは債権者の申立てに基づき裁判所が一括請求を命じる手続きです。受け取ってから2週間以内に督促異議を申し立てないと、債権者の申立てにより「仮執行宣言」が付され、いつでも強制執行が可能な状態になります。
なお、仮執行宣言付支払督促が届いた後も、送達から2週間以内であれば異議を申し立てられます。異議を申し立てれば通常の訴訟に移行し、こちらの主張を述べる機会が得られます。ただし異議だけでは強制執行は止まらないため、書類が届いた時点ですぐに弁護士へ相談してください。
給与・預金・財産の差し押さえ
仮執行宣言付支払督促に基づき、証券会社はいつでも財産の差し押さえを申し立てられるためです。
差し押さえの対象は給与や預貯金、不動産などです。給与の場合、手取り額が44万円以下ならその4分の1、44万円を超える場合は33万円を超える部分が毎月差し引かれ、勤務先にも事情が知られてしまいます。
「時効を待てば解決する」が現実的ではない理由
証券会社が法的な手続きを実行すると、それまでの時効期間がリセットされ更新されるためです。
債権の消滅時効は原則5年ですが、時効が完成する前に証券会社が支払督促や裁判上の請求を行うと完成が猶予され、これが確定するとその時点から新たに10年間時効が進行します。未払いを5年間放置されることはまずないため、時効待ちは通用しません。
知恵袋やブログの「放置で解決」を鵜呑みにする危険性
ネット上の「放置していれば諦めてくれる」といった意見は、法的な強制執行のリスクを無視しているためです。
実際には証券会社は裁判所を介した差し押さえを速やかに行います。法的措置が取られれば、未払い額に遅延損害金や裁判費用が上乗せされ一括請求されるため、根拠のない体験談を信じて先延ばしにするのは危険です。
追証による借金を整理する3つの債務整理手続き
追証の返済が自力で難しい場合、法律に基づいて借金を減額・免除する「債務整理」が有効な解決策になります。
ここでは3つの手続きの特徴を紹介します。
| 手続きの種類 | 概要 | 追証での主な注意点 |
|---|---|---|
| 任意整理 | 利息・遅延損害金をカットし元金を3〜5年で分割返済 | 元金の減額は難しく安定収入が必要 |
| 個人再生 | 総額に応じて100万円〜10分の1まで減額(清算価値が上回る場合はそちらが基準) | 免責不許可事由の制限を受けずに利用できる |
| 自己破産 | 裁判所の免責許可決定で借金の支払義務を免除 | 裁量免責を得るための誠実な対応が必要 |
任意整理による利息カットと分割返済
任意整理は、弁護士や司法書士が証券会社と交渉し、将来の利息や遅延損害金をカットしてもらう手続きです。
残った元金は原則3〜5年の分割で返済していきます。裁判所を介さないため、家族や職場に知られるリスクが最も低い手続きです。整理する債権者を選べるため、住宅ローン等を除外することもできます。
個人再生による借金の減額
個人再生は、裁判所に再生計画の認可を得て、借金の総額を減額してもらう手続きです。
減額後の金額(最低弁済額)は、借金の総額に応じて次のように決まります。
・100万円未満:全額
・100万円以上500万円以下:100万円
・500万円超1,500万円以下:借金総額の5分の1
・1,500万円超3,000万円以下:300万円
・3,000万円超5,000万円以下:借金総額の10分の1
ただし「清算価値保障原則」により、自己破産した場合に債権者へ配当される財産の価値が上記を上回る場合は、そちらの金額が基準になります。
減額後は原則3年(最長5年)で返済していきます。自己破産のような免責不許可事由の制限がないため、投資による借金でも借入の理由を問わず利用できます。
自己破産による借金の免除
自己破産は、裁判所の免責許可決定によって、税金などを除くすべての借金の支払義務を免除してもらう手続きです。
一定以上の財産は処分の対象になりますが、生活に必要な現金99万円以下などの「自由財産」は手元に残せます。返済の見込みが立たない場合の最終手段として、経済的な再生を図れます。
弁護士・司法書士へ相談する4つの手順
精神的な限界を迎える前に、法律の専門家を頼ることが根本解決への近道です。
ここでは、実際に相談してから解決までの4つの手順を解説します。
無料相談窓口への相談
深夜に一人で検索を繰り返して抱え込むのをやめ、実績のある事務所の無料相談を活用することが第一歩です。
多くの事務所では初回相談を無料で行っています。追証の金額や滞納期間、家計の状況をありのまま伝えれば、専門家が最適な解決ルートを一緒に考えてくれます。
受任通知による督促の即時停止
正式に依頼すると、専門家から「受任通知」が債権者へ発送されるためです。
貸金業者や債権回収会社は、受任通知を受け取った後に本人へ直接の督促や取り立てを行うことが法律で禁止されています(貸金業法21条1項9号など)。
証券会社やFX業者はこれらの規定の直接の対象ではありませんが、実務上は代理人が就いた時点で、連絡先を本人から弁護士へ切り替える対応が一般的です。督促の電話や手紙は、多くのケースで依頼後まもなく止まります。
弁護士費用の分割払い・法テラスの立替制度の活用
手元にお金がなくても、費用の支払いを猶予・分割できる仕組みが整っているためです。
依頼と同時に返済が一時停止するため、そのお金を費用の積み立てに回せます。資力基準を満たせば、法テラスの民事法律扶助制度で無料相談や費用の立て替えも利用できます。
家計状況の整理と最適な手続きの決定
専門家のサポートを受けながら、正確な負債額や収入、収支バランスを可視化していくためです。
現在の状況と将来の支払能力を踏まえ、「任意整理」「個人再生」「自己破産」から最も適した手続きを決定します。決定後の実務は専門家に委ねられるため、安心して日常を取り戻せます。
生活費が底をついた場合に使える公的支援と、新規借入を避けるべき理由
追証の督促に追われて家計が逼迫し、生活費が尽きてしまうこともあります。そのようなときこそ、新規の借入ではなく公的な支援を検討してください。
弁護士へ依頼した後や自己破産を検討中の新規借入は避ける
自己破産を検討している段階での借入は、返済できないと分かっていながら借りた「不誠実な借入」とみなされ、裁量免責の判断で不利に働くリスクがあります。破産法上も、支払不能を隠して信用取引を行うことは免責不許可事由に挙げられています。
弁護士に依頼すると、受任通知の発送によって返済が一時的に止まります。これまで返済に充てていた分を生活費や弁護士費用の積み立てに回せるため、まずは相談を優先してください。
生活困窮者自立支援制度に相談する
離職や収入減で住まいを失うおそれがある場合、自治体から家賃相当額が支給される「住居確保給付金」を利用できる場合があります。原則3ヶ月間、延長は2回まで最長9ヶ月間で、貸付ではなく給付のため返済は不要です。窓口はお住まいの自治体の自立相談支援機関です。
生活福祉資金貸付制度を検討する
緊急かつ一時的に生計の維持が困難になった場合は、社会福祉協議会が窓口の「緊急小口資金」を利用できます。10万円以内を無利子・連帯保証人不要で借りられる公的な貸付制度です。
悪質な業者に注意する
追証で困っている人を狙い、「審査なしで融資」「借金を一本化します」「債務整理の費用を立て替えます」などと持ちかけてくる業者がいます。正規の登録を受けていない貸金業者(いわゆる闇金)や、弁護士資格を持たずに債務整理を仲介する「整理屋」は、状況をさらに悪化させます。
貸金業者は財務局または都道府県への登録が必要です。不安な場合は、日本貸金業協会の貸金業相談・紛争解決センター(0570-051-051)や、金融庁の金融サービス利用者相談室にご相談ください。
まとめ
株やFXの失敗で作った追証による借金は、原則として免責不許可事由に該当します。しかし、裁判所が個々の事情を考慮する「裁量免責」という仕組みがあり、自己破産全体の免責許可率は96%以上と高いのが実情です。
追証を放置すると、支払督促や給与・財産の差し押さえといったリスクが現実になるため、時効待ちは通用しません。まずは弁護士や法テラスの無料相談窓口を頼り、受任通知で督促を止めてから解決策を選びましょう。
なお、自己破産を検討している段階での新規借入は「不誠実な借入」とみなされ、免責の判断で不利に働くおそれがあります。生活費が尽きた場合は、借入ではなく自治体の自立相談支援機関や社会福祉協議会へ相談してください。
参考:日本貸金業協会「悪質な金融業者にご注意!」 https://www.j-fsa.or.jp/personal/info/dark_finance.php
参考:金融庁「金融サービス利用者相談室」 https://www.fsa.go.jp/receipt/soudansitu/index.html
参考:法テラス「無料法律相談のご利用の流れ」 https://www.houterasu.or.jp/site/soudan-tatekae/goriyounonagare.html
参考:裁判所「支払督促」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_22/index.html